書道用の筆。
使うたびにきちんと洗わないと根元に墨の固まりが溜まってだんだんと広がっていく。
では、どうやって手入れするのか?
書道道具店で必ず言われるのが、洗剤で洗ってはダメ。
はじめのうちは、その言いつけを守り、お湯で丁寧に黒い汁が出ないまで洗っていました。
洗い方は、筆をまっすぐにして持ち、強すぎず、弱すぎずの力で流し台の底面にトントンと軽く叩き付けます。何十回もするうちに黒い汁が出なくなります。その後、ぬれた状態で吊るすと根元の奥から黒い汁が、どんどんしみ出してきます。
数日それを繰り返してもどんどん出てきます。
毛を持ち、もむと筆によっては、棒から毛がズボって丸ごと抜けた事も有ります。
毛の仕組みは?
毛がぬれると、キューティクルが広がる。その隙間に墨が入り込む仕組み。
固形墨とは?
ススに「にかわ」を練り込み固めたもの
にかわとは?
コラーゲン・ゼラチン成分
画材屋に売っています。油絵を描く時にキャンバスに塗ってから絵を描きます。
質の良い固形墨を使っている書道家の筆は、使い込むうちにニカワの成分が沈着し、きれいな黄金色になっていきます。
洗い方に戻ります。
筆の製造メーカーに聞きました。
そこでいただいたアドバイスは
「にかわで洗う」または「ふのり」
ふのりは海藻からつくる糊。売っている書道の筆は固まっていますよね。
これはふのりで固めているそうです。
でも調べてみると高価だし、簡単に手に入らない。
画材屋で「にかわ」を買ってきました。
さらさらした液体です。冬などの低温化ではゼリーみたいに固まりますが、湯煎するとさらさらになります。
キャンバスに塗って乾かすと固くなります。
筆屋さんが言うには、
「墨は、にかわで固めてある。にかわには、にかわが相性が良い」
油分は、同じ油の灯油で洗うと良く落ちますよね。ペンキを塗ったあとの刷毛は同じ成分のシンナーや薄め液で簡単に溶けておちるように。
買ってきたニカワで早速洗ってみる。
コップにニカワ液を入れしばらく浸し、流し台でトントントン。
ニカワ液がさらさらすぎて食いつきが悪い。
なので障子用の液体のりを混ぜ、粘り気を出してみた。
結果。
びっくりするほど、どんどん黒い墨がにじみ出てくる。
とりあえずこれが理想的な洗い方。
でも最近は。
どこにでもある食器用の中性洗剤を使ってます。
手に優しいとかの洗剤はダメ。リンスやコンディショナーなどは、毛のキューティクルの隙間に入り込んでススを入れなくしてしまう。
墨汁が出なくなるまで洗剤で洗った後、良くすすぐ。最後にニカワ液に浸し、しばらく置いてから良くすすぐ。
最後にニカワ液に浸すのは?
食器用の中性洗剤を使うので洗い過ぎになるのではないか?
子供の頃、石鹸で髪の毛を洗っていました。当然ごわごわになります。
大人になってから、シャンプーが無くなったので頭に石鹸をこすりつけ洗った事が有ります。
湯通しした鳥のササミの様になります。
そこで椿油を髪の毛に塗ったら?
しっとり、つやつやになると思います。
ニカワの成分は、コラーゲン・ゼラチン。毛の成分はケラチン。
ケラチンは、タンパク質。コーラーゲンもタンパク質。
何百年前からの固形墨にニカワが使われているし、毛には相性が良いはず。
注意しなければならないのは、ニカワに浸した後よくすすぐ事。放っておくとカチカチになります。
中性洗剤に抵抗がある人は、障子用の液体のり、または昔から有る白いデンプン糊に水をちょっと加えゆるくして使う。中性洗剤と同じ効果があります。粘り気の成分に墨がどんどん移っていきます。
書道屋さんや筆やさんの間では、洗剤で洗う事は絶対ダメ。きつく注意される行為です。
あくまでも自己責任でお試しください。